【相続解決事例】未成年者が相続人に含まれている場合の留意点
1.始めに
愛知県岡崎市(西三河地域)を中心に、相続税申告等の相続業務のサポートを行っております、宮島税理士事務所です。
さて、少子化が進む中、孫のために遺産を残したい、同時に相続税対策も行いたいとお考えの方もいらっしゃると思います。
今回のコラムでは、相続税対策として孫を養子にしたケースで、孫が未成年者だった場合の実務上の留意点等について述べていきたいと思います。
2.今回の相続事例
・遺産 →1億円(金融資産)
・相続人 →4人(未成年者10歳を含む)
遺産分割方法(4人で均等相続)
相続税 →524万円
仮に孫養子がいない3人の場合→相続税630万円
※配偶者の税額軽減は考慮外
※未成年者控除は考慮外
※孫の2割加算は考慮外
3.養子縁組を活用することによるメリット(節税効果)
①基礎控除が増える。現在の相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人となっています。法定相続人(養子)が増えれば、基礎控除の額が増えます。
但し、被相続人に実子がいれば養子は一人ほど、いなければ養子は二人までに制限されています。
②生命保険金・退職手当金の非課税枠の拡大。現在非課税枠は500万円×法定相続人の人数となっています。法定相続人(養子)が増えれば、非課税枠が拡大します。
③最大の効果は、相続税の算出計算式にあります。法定相続人(養子)が増えると、相続人の一人当たり法定相続分が減少するため、超過累進税率である相続税の適用税率が低くなり、相続税の総額が少なくなります。
4.養子縁組を活用するときの注意点
①孫養子は一代相続を飛ばせるというメリットもありますが、相続税は2割加算した金額とされます。
②養子の数を相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められた場合においては、税務署長は、相続税について更生できるものとされています(相続税法63条)。
③養子となる本人の意思を確認しないですると、後々、養子になった本人と家族の間でしこりが残る可能性があります。税金を安くするために、家族関係がおかしくなっては、本末転倒です。
5.手続き上の留意点
①養子が未成年者の場合、親権者である父又は母が、その子との間でお互いに利益が相反する行為(これを「利益相反行為」という。)のため、特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。
②特別代理人の選定手続き
特別代理人の選定を申し立てるには、子一人につき印紙代800円を支払い、連絡用の郵便切手、記入した申立書と必要書類を家庭裁判所に提出する。
一般的な必要書類は、
・未成年者の戸籍謄本
・親権者の戸籍謄本
・特別代理人候補者の住民票又は戸籍附表
・利益相反に関する資料(遺産分割協議案等)
です。
6.終わりに
今回の解決事例では、祖母が死亡した場合に、共同相続人である祖父と父と父妹と未成年者が行う遺産分割協議など、未成年者とその法定代理人(未成年者の父)の間で利害関係が衝突する事例である。
遺産分割協議において親子間に利益相反が発生してしまうため、遺産分割協議書に署名押印するものは、子本人ではなく特別代理人となる。今回の分割案では、各相続人全て平等で遺産分割を行った。
今回は、家庭裁判所に申立書を提出して2週間程度で選任が認められたが、家庭裁判所の判断によっては、特別代理人の変更、遺産分割協議書の差し替え等が必要になる場合もある。
未成年者が相続人に含まれる場合には、特別代理人の選任に想定外の時間がかかることを留意するべきである。
従って、相続税の申告手続きも通常よりも余裕を持って専門家等に依頼するべきである。
最後に、未成年者を含む相続税申告でお困りの方は弊事務所にご相談ください。