【相続コラム】リフォームを行う際の税務上の注意点について(贈与税・相続税)
1. 始めに
愛知県岡崎市(西三河地域)を中心に、相続税申告等の相続業務のサポートを行っております、宮島税理士事務所です。
近年、お客様より、「実家や自宅のリフォームを考えているが、税務上のどのような点に注意すべきか。」といった内容のお問い合わせを多く頂いております。
今回は、リフォームを行う際の税務上の注意点について、正常時(贈与税)と相続発生時(相続税)の2つの観点から、弊事務所での相談事例も交えて述べたいと思います。
2.贈与税に関する注意点
先日、お客様より、以下のようなご相談を受けました。
「独り暮らしの母と一緒に住むため、実家を二世帯住宅にリフォームしようと検討しています。
母は資金があまりないため、息子である私が資金を全て出す予定ですが、土地と建物は母の名義です。
この場合、何か問題はあるでしょうか。」
所有者が別人の2個以上の物が結合して1個の物になることを「付合」といいます。
今回のように不動産(建物)に動産(増改築部分)が付合した場合は、原則として不動産の所有者がその動産の所有者となります。
つまり息子から母へ増改築部分の所有権が移転する(贈与)ため、息子が「その分のお金を私に払ってください」という権利を行使しないと、母親に対して贈与税が発生する可能性があります。
この場合、贈与税が発生しないようにするためには、次の方法等があります。
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*親子で増改築資金の貸し借り契約書を作成し、利息なども含めて適正に精算する。
*増改築分の資金と建物の持分の価値が等しくなるように、息子にその持分の移転登記を行う。
*付合が生じないように、例えば1階と2階を区分所有登記で別々にする。
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尚、息子が自分の持分のない建物のリフォーム資金を金融機関から借り入れた場合、自分の所有物件に係る借入金とならないため、所得税の住宅ローン控除の適用を受けることができない点にも注意が必要です。
3. 相続税に関する注意点
(相談事例) 被相続人 Aさん
・ 相続開始日: 平成31年3月
・ 相続人: 2名 (基礎控除額 3,000万円 + 600万円×2 = 4,200万円)
・ 遺産総額: 約1億円
・ リフォーム時期: 平成25年4月
・ リフォーム代金: 約1,000万円(被相続人が全額負担)
・ リフォーム内容: 大規模な内装改修工事
相続税申告におけるリフォーム工事の取扱のポイント
① 被相続人が生前に自身の資金で行ったリフォーム工事であるか。
相続税申告では、被相続人自身が行った(費用を支払った)リフォーム工事が評価の対象となります。
② 実施したリフォーム内容が相続税の評価対象となるか。
相続税の計算上、評価対象となるのは、リフォーム工事の建物の価値を高める内容(=資本的支出)の部分です。
(増築や大規模な改築工事など)建物の現状維持のための工事(クロスや床の補修、屋根や外壁の塗装など)は、修繕とみなされ、相続税の評価対象とはならないため、相続財産に加算されることはありません。
今回のAさんの場合、リフォーム内容は建物の価値の高めるもの(資本的支出)であると判断し、リフォーム工事の相続税評価における価値を分析した上で、相続財産として計上しました。
尚、固定資産税評価額にリフォームによる建物の価値の増加が反映されている場合は、相続税申告時にリフォーム工事を評価する必要はありません。
尚、参考までに、リフォーム工事の資本的支出の該当有無については、名古屋国税局が作成している相続税チェックリストの項目にも含まれています。
特に、高額なリフォームを行った場合等には注意が必要ですが、リフォーム内容が通常の修繕にあたるかどうかの判断は難しいため、専門家に相談することをおすすめします。
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4.まとめ
大規模なリフォーム工事は被相続人等の多額の資金移動が発生するため、税務署が注視している項目となります。
従って、リフォームを行う際には、以下の点に注意しておくことが重要です。
贈与税
・ 建物の所有者以外がリフォーム資金を支払う場合は、登記の持分に反映させるなど、贈与税が発生しないような対策をしておく。
相続税
・ リフォーム工事内容を明確にするため、工事契約書や見積書などの書類を保存しておく。
リフォームを行う際の税務上の問題点については意外と見過ごされがちですがこれはとても身近な問題ですので気になる方は専門家にご相談ください。
最後に、リフォーム工事に伴う税務問題含め、相続税申告等についてご相談のある方は、弊事務所までお気軽にご連絡下さい。