【相続解決事例】「地積規模の大きな宅地の評価の特例」を適用した場合の土地の評価について
1. 始めに
愛知県岡崎市(西三河地域)を中心に、相続税申告等の相続業務のサポートを行っております、宮島税理士事務所です。
平成30年度より、広い土地の評価基準として、従前の「旧広大地の評価」に代わり、「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました。
従前の「旧広大地の評価」には以下のような問題点がありました。
・評価の規定の解釈が難解で 納税者と税務署でしばしば争いが生ずる。
・広大地通達を適用すると実際の取引価額と大きく乖離する場合がある。
・宅地面積が同じならば、形状に差異があっても相続税評価額が同じになる。
これらの問題点を解消するため、新たに設けられたのが、「地積規模の大きな宅地の評価の特例」です。
今回は、弊事務所でこの制度を利用した事例について紹介したいと思います。
2. 今回の相続事例
・相続発生年時 → 平成30年3月 ・相続人 → 2名 |
・土地の評価方法
① 雑種地A 280.00㎡ ② 雑種地B 221.00㎡ |
・「地積規模の大きな宅地の評価の特例」適用による評価減
適用前 適用後 差額
①土地(雑種地A・B)の評価額 4,190万円 3,300万円 ▲890万円
(約20%の評価減)
②相続税課税価格合計金額 11,000万円 10,110万円 ▲890万円
③相続税額(配偶者軽減税率考慮外) 960万円 787万円 ▲173万円
3. 「地積規模の大きな宅地の評価の特例」を適用する場合のポイント
① 面積要件の確認
岡崎市は三大都市圏となり、500㎡以上の土地に適用できますが、一部要件が1,000㎡以上の地域があるため、岡崎市役所に該当地の適用面積を確認する必要があります。
② 評価単位による面積要件の判定
今回の事例では一筆あたりは500㎡以下の土地ですが、一体評価した場合、合計面積は500㎡以上となるため、適用できます。
③ 不整形地補正率等との併用可能
4. 解説 (地積規模の大きな宅地の評価とは)
① 要件
(1) 地積が500㎡以上(三大都市圏以外は1,000㎡以上)であること
(2) 以下のⅰからⅲの地域でないこと
i. 市街化調整区域に所在
(都市計画法に規定する開発行為を行うことができる区域を除く)
ii. 都市計画法に規定する工業専用地域に所在
iii. 容積率が400%(東京都23区は300%)以上の地域の所在
(3) 普通商業地区・併用住宅地区及び普通住宅地域として定められていること
上記要件に該当すれば、地積規模の大きな宅地の特例が適用できる。
具体的には、従前の広大地の要件(戸建住宅の開発を行う場合、道路の開設が必要)と異なり、面積と地区区分が該当すれば適用できます。かなり要件が明確になりました。
岡崎市で考えるならば、普通住宅地区で500㎡以上のやや広い宅地を有している場合、地積規模の大きな宅地の特例が適用できます。(※マンション適地等でも地積規模の大きな宅地の特例は適用できます。)
② 減額割合について
面積 規模格差補正率
500㎡ 0.8
1,000㎡ 0.78
2,000㎡ 0.75
3,000㎡ 0.74
4,000㎡ 0.72
5,000㎡ 0.71
☆ 地積規模の大きな宅地の評価では、規模格差補正率以外に不整形地補正率等も適用できるようになりました。
但し、地積規模の大きな宅地の評価はそれらの規定を適用した場合、評価減額前の土地評価の7割ぐらいに落ち着く可能性があります。
もちろん、土地の形状によっては、さらに評価額が低くなる可能性はありますが、旧広大地の評価と比較し、減額幅は一般に減少しています。
5. まとめ
この制度は平成30年度に新設されてまだ間もないため、相続税土地評価の際に適用し忘れるケースがあるので注意が必要です。
万が一、適用し忘れた場合、相続税申告期限から5年以内であれば更正の請求を行うことも可能です。
最後に、土地の評価方法等を含め、相続税申告についてご相談のある方は、弊事務所までお気軽にご連絡ください。